新しく屋号をつけよう
屋号の持つゆたかな世界に共鳴し、十日町市の中心部でも「屋号をつけよう」という新たな動きが広がった。その名も「小さな屋号のれん」。屋号がある家はその屋号を、屋号のない家は新しい屋号を付けてのれんに記し、家の軒先に下げようというイベント。発案者は現代美術家の原高史さん。原さんは「サインズ オブ メモリー」と題して、今までドイツや浦川原村(現・上越市)で、家の窓にその家の歴史やメッセージを記す創作活動を展開してきた。一語の中に家の歴史が凝縮されている屋号は「サインズ オブ メモリー」という原さんのコンセプトに重なる。そして、原さんが前から注目していたという大地の芸術祭(2006年第3回開催)のプレイベントで「小さな屋号のれん」は始まった。
残暑の厳しい8月の最後の日。学校町1丁目の人々が思い思いに屋号とメッセージを準備して、中央公民館にやってきた。「うちは川っぱたにあるから、かわばた!」「そのメッセージいいねえ〜」と楽しみながら、のれんを作っていく。屋号が記され、家族や町へのメッセージが書き添えられて、白いプリントペーパーが世界で1枚ののれんに変わっていく。できあがった屋号のれんは早速家に持ち帰られ、玄関や軒先で訪れる人々を出迎えた。
中越大震災を乗り越えた経験から「みんな元気でがんばろう!!」「生きてる喜び、家族に感謝」など、屋号のれんには復興に向けて励まし合うメッセージが並ぶ。照れくさくて普段は口にできない家族への感謝や気持ち、町への愛着。心温まるメッセージの数々。新しく付けられた屋号にも、明るい未来への祈りが込められている。
「サインズ オブ メモリー」。「記憶の記号」。先人たちの記憶と今を生きる人々の想いが屋号を軸に交錯するとき、そこに新しい祈りが生まれる。その想いがこの町をさらにゆたかな町へと発展させていく。
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かわばた
家が川の近くにあるから「かわばた」です。わかりやすいでしょ?
はなさか
この坂道は子どもたちの通学路。春になると水仙が咲き、秋になるとコスモスが咲き誇ります。花の咲く道を歩いた思い出は子どもたちの記憶に残り、おとなになってから、季節のにおいや学校の思い出とともに鮮やかによみがえるでしょう。この花は近所に住む90才のおじいさんが毎日欠かさず手入れし、丹精を込めたものでした。残念ながら、その方は昨年亡くなりましたが、この町に住む私たちがその跡を継ぎ、これからもずっと花の咲く坂道にしていきたいと思います。
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