産業
きもの産業に役立つ雪
十日町市では絹織物(きぬおりもの)の生産がさかんです。絹織物がさかんになった理由は、雪と関係しています。
雪がふることによって、十日町市は冬の湿度(しつど)が高くなります。高い湿度は絹糸(きぬいと)を加工するときに、糸がきずつきにくく品質(ひんしつ)を高くたもてます。
昔は冬のあいだに織物産業ではたらく人がたくさんいたことも大きな理由です。昔は今よりも農業ではたらく人がたくさんいました。雪国では冬に田んぼや畑が使えません。そこで、冬の間だけ別の仕事をする人が多くいました。女の人であれば織物会社から生糸と織物の機械を借りてきて、家の中で機織(はたお)りなどをしていました。
このように、よい品質の織物がつくれる季節に、はたらく人がたくさんいたことが、絹織物がさかんになった理由です。
工業にかかせない地下水
雪どけ水は、川に流れ出るだけではなく、土にしみこみ地下水となります。地下水は、井戸からくみ上げられ、家庭や工場で利用されています。
たとえば、お酒をつくる会社では品質(ひんしつ)のよい水が必要です。新潟はよいお米の産地(さんち)であるとともに、きれいな水がたくさんあることで、たくさんのお酒の会社があるのです。織物(おりもの)産業でも、きものに色をつけ終わったあとで、染料を洗い流すときに多くの水が必要です。
このように、豊富(ほうふ)な雪どけ水は地下水となって利用されています。
おいしいお米と雪の関係
冬につもった雪は、春にとけて川に流れだします。十日町市周辺から流れ出た雪どけ水は、市内はもちろん、下流の新潟平野の水田をうるおします。
お米をつくるためには、たくさんの水が必要です。十日町市とそのまわりは「魚沼(うおぬま)地方」とよばれています。この魚沼地方で作られるコシヒカリというお米は、日本一おいしい「魚沼産(うおぬまさん)コシヒカリ」として有名です。お米屋さんでも一番高い値段(ねだん)がつけられています。
豊富な雪どけ水があることと、田んぼが雪の下で半年間休むことが、おいしいお米ができる理由だと言われています。
きのこ生産がさかんなわけ
十日町市はきのこの生産がさかんです。きのこは鉄骨製(てっこつせい)の大きな建物の中で栽培(さいばい)されます。
雪国では冬になると田畑が雪の下になって使うことができません。しかし建物の中は、雪の影響(えいきょう)を受けることがないため、鍋物等で需要が増える秋から冬にさかんに作られています。
全国できのこ〈えのき茸(たけ)〉の生産がさかんな都道府県(とどうふけん)は、1位=長野県、2位=新潟県、3位=福岡県という順番です。そんな新潟県の市町村のなかでも、十日町市内の生産量は県内第1位をしめています。(平成18年2月末現在)
あまくておいしい雪下にんじん
雪下にんじんというのは、雪の下から掘(ほ)りだしたにんじんのことです。十日町市のとなりの津南町(つなんまち)でたくさん作られています。
秋に、収穫(しゅうかく)できるほどの大きさに成長したにんじんを、すぐに収穫せず、ひと冬雪の下にしておきます。にんじんは雪にふれると、凍(こお)って死んでしまわないように、みずからの体内に糖分(とうぶん)をたくわえます。
このため、春先に雪の下から掘りおこしたにんじんは、甘(あま)くて人気があります。
スキー場は雪をまってます
冬になると、建物や庭木(にわき)、道路を雪から守らなくてはならないため、雪がふるのをいやがる人がたくさんいます。
その一方で、雪が降るのを待ちのぞんでいる人がいます。十日町市やその周辺(しゅうへん)には、有名なスキー場がたくさんあって、関東方面(かんとうほうめん)から毎年多くのお客さんがスキーやスノーボードをしにやってきます。
しかし、雪がふらなければ、お客さんは来てくれません。スキー場やホテルではたらく人たちは、冬になったら、たくさん雪がふることを待ち望んでいます。
「雪室(ゆきむろ)」雪を使った冷房と保冷庫(ほれいこ)
冬に降った雪を「雪室(ゆきむろ)」という部屋に蓄えておいて、その冷たい空気を夏の冷房に使ったり、米や野菜を保管してある倉庫に循環させたりします。雪を使った冷たい空気は、温度と湿度(しつど)を一定に保てるのでとても便利です。また、電気をあまり使わないのでお金の節約(せつやく)にもなります。市内には、小学校の教室約5.3杯分の雪が入る雪室を持つ施設もあります。
夏だってクーラーいらず
雪を地下室にたくわえて、夏のあいだ地下室の空気をクーラーのかわりに使っている施設(しせつ)があります。
地下室では、温度と湿度(しつど)が一定にたもてるため、食べ物や飲み物を冷やすこともできます。クーラーを使う場合にくらべて、たくさんのお金を節約(せつやく)することができます。
雪で走る山手線!?
信濃川の中流域(ちゅうりゅういき)〈この中に十日町市も含まれます〉には、東京電力とJR東日本のふたつの水力発電所があります。信濃川の水を取水口(しゅすいこう)から取り入れて、数十キロメートル下流まで地下トンネルで運び、そこでの高低差を利用して水力発電をおこなっています。
つくられた電気は関東地方(かんとうちほう)に送られて、家や工場、学校の電気として使われています。JR東日本では、電気を都心を走る山手線に使っています。このように、雪国の雪どけ水は、電気にすがたをかえて利用されているのです。
更新日:2021年04月22日